体の緊張をとく練習
ヴァイオリン・ヴィオラの脱力の第一歩

「脱力」――ヴァイオリンやヴィオラを習っていると、必ず耳にする言葉ですよね。でも、脱力とは「すべての力を抜くこと」ではありません。厳密には、体には 必要な力と、不必要な力 があります。楽器を構え、弓を動かすために必要な力はある。問題なのは、それ以外の「余計な力」です。そして、この不必要な力を抜くために、まず大切なことがあります。それは、 自分の体のどこに力が入っているのか、そして本当にその部分だけが力んでいるのかを、よく観察する ことです。力みは、自分では気づいていないことがほとんどだからです。
今日は、その第一歩となる「体の緊張をとくための、基本の練習」をお伝えします。この練習は、 ヴァイオリンとヴィオラに共通 して使えます。どちらも顎と肩で楽器を構えるため、脱力の考え方はまったく同じです。ヴィオラは楽器が大きく重いぶん、無意識に力が入りやすいので、この基本の練習がとても役立ちます。
参考文献: 『「あがり」を克服する 〜ヴァイオリンを楽に弾きこなすために』カトー・ハヴァシュ著 (音楽之友社)
練習の手順
楽器を構える「前」の、体の状態づくりから始めます。順番に行っていきましょう。
- 左手を頭の上に持ち上げ、そこから演奏ポジションまで、ゆっくり降ろします
- 肩の関節を、左右に揺らします。 上腕は、やや体の外側へスイングさせましょう
- 頭が自然な位置にあるか、確認します。 このとき、首も力まず、ニュートラルな位置にあることをチェックします
- 左腕と手首はそのままに、右手で楽器を持ち、左手の空間にはめ込みます
この一連の流れで、「力の抜けた自然な状態」のまま楽器を構える、という感覚をつかみます。
「肩の関節」ではなく「肩甲骨から」
手順2について、大切な補足があります。参考にしたハヴァシュ氏の本では「肩の関節を揺らす」と書かれていますが、厳密には 「肩甲骨から」動かすイメージ を持つと、より効果的です。動きの出発点を肩の先ではなく、背中の肩甲骨に置く。そうすると、腕全体が自然に連動し、余計な力が抜けやすくなります。この「肩甲骨から」という感覚は、脱力の練習すべてに共通する、いわば合言葉のようなものです。
構えるときの、力を入れないコツ
体の緊張がとけた状態のまま、楽器を構えます。このとき、次の3点を意識すると、余計な力が入りません。
- 楽器は、鎖骨の上に「のせるだけ」 。ぎゅっと挟み込む必要はありません
- 顎も、顎あての上に「軽くのせる」 だけ。押さえつけないようにします
- ネックは、左手の親指と人差し指の間のスペースに、軽くのせます
「持つ」「支える」「挟む」ではなく、「のせる」。この感覚が、脱力した構えの基本です。楽器の重みを、体の自然な支えに預けるイメージを持ってみてください。
なぜ、この練習が大切なのか
演奏中の力みは、音の硬さや、動きのぎこちなさ、そして「あがり」の原因にもなります。けれど、演奏を始めてから「力を抜こう」と思っても、なかなかうまくいきません。だからこそ、 楽器を構える前の段階で、脱力した状態を作っておく ことが大切なのです。土台となる構えがリラックスしていれば、そのあとの演奏も、力みにくくなります。
そして繰り返しになりますが、脱力の第一歩は「観察」です。この練習を通して、自分の体のどこに、どんなときに力が入るのかを知る。それが、余計な力を手放していく出発点になります。
まとめ
- 脱力とは「全部の力を抜く」ことではなく、 不必要な力だけを手放す こと
- 第一歩は、 自分のどこが力んでいるかを観察 すること
- 楽器を構える前に、 体の緊張をとく 練習をする
- 動きの出発点は、肩の先ではなく 肩甲骨から
- 楽器は「挟む」のではなく 「のせる」
- これは ヴァイオリン・ヴィオラに共通 する
脱力は、一度で身につくものではなく、繰り返し観察し、調整していくものです。まずはこの基本の練習で、「力の抜けた構え」を体に覚え込ませてくださいね。
体の緊張がとけたら、次は各部位の脱力にも取り組んでみましょう。左手の力みを解消する では左手の脱力を、弓が震える!を解決する では右手 (弓) の力みへの対処を紹介しています。また、この練習の鍵である「肩甲骨から動かす」感覚は、肩甲骨から動かすために で詳しく解説しています。
Academy Customize では、ヴァイオリン・ヴィオラのいずれも、それぞれの専門家が指導しています。脱力のような感覚的なことは、実際に体の状態を見てもらうのが、いちばんの近道です。「力みが抜けない」「構えが苦しい」といったお悩みは、ぜひ体験レッスンでご相談ください。
