本番で緊張してしまう子への接し方

親の一言が力になる

吉川 采花
本番で緊張してしまう子への接し方 ― 親の一言が力になる

発表会やコンクールが近づくと、お子さんの様子がそわそわしてくる。「本番、緊張する」「間違えたらどうしよう」と不安を口にしたり、当日は表情が硬くなったり――。

そんなお子さんを見て、親としても心配になりますよね。「うまく弾けるかしら」「本番で実力を出せなかったら、かわいそう」。そして、どう声をかけてあげればいいのか、迷ってしまう方も多いはずです。

この記事では、本番で緊張してしまうお子さんに、親としてどう接すればいいのかをお話しします。まずお伝えしたいのは、 緊張は決して悪いものではない ということ。その理由から、順にお話ししていきます。

緊張は「悪いもの」ではない

「緊張しないようにさせてあげたい」――親としては自然な願いです。でも実は、 緊張をゼロにする必要はありません。 むしろ、なくさないほうがいいのです。

緊張するのは、その子が本番を大切に思い、真剣に向き合っている証拠です。どうでもいいことに、人は緊張しません。緊張は、「うまくやりたい」という気持ちの裏返しなのです。

そして、適度な緊張は、集中力を高め、演奏をより良いものにしてくれます。プロの演奏家でさえ、本番前には緊張します。大切なのは緊張をなくすことではなく、 緊張と上手に付き合えるようにしてあげること なのです。

まずは親御さん自身が、「緊張してもいいんだ」と考え方を切り替えること。それが、お子さんを楽にする第一歩になります。

やってはいけない声かけ

よかれと思ってかけた言葉が、かえってお子さんの緊張を強めてしまうことがあります。まず、避けたい声かけから見ていきましょう。

「緊張しないで」 いちばん言ってしまいがちな言葉ですが、実はあまり効果がありません。「緊張しないで」と言われると、かえって緊張を意識してしまうものです。それに、緊張は悪いことではないのですから、無理に打ち消す必要はありません。

「間違えないようにね」 これは、 子どもの意識を『失敗』に向けてしまう 言葉です。間違えないことばかり気にすると、演奏を楽しむ余裕がなくなり、かえってミスを招きやすくなります。

「ちゃんと弾かないと恥ずかしいよ」 プレッシャーを与えるこうした言葉は、お子さんを追い詰めます。本番を「怖いもの」にしてしまい、音楽そのものを嫌いになるきっかけにもなりかねません。

他の子と比べる言葉 「〇〇ちゃんは上手だね」といった比較は、たとえ悪気がなくても、お子さんの自信を削ります。本番前は特に避けたい言葉です。

本番前に、かけてあげたい言葉

では、どんな言葉をかければいいのでしょうか。ポイントは、 結果ではなく、これまでの頑張りと、楽しむことに目を向けさせる ことです。

「ここまでよく練習してきたね」 本番の出来ではなく、そこに至るまでの努力を認める言葉です。積み重ねてきた事実は、何より確かな自信の土台になります。

「間違えても大丈夫だよ」 「失敗してもいい」という安心感は、緊張を和らげます。逃げ道があると分かると、人はかえって落ち着いて力を発揮できるものです。

「楽しんでおいで」 本番を「試験」ではなく「楽しみの場」ととらえ直させる言葉です。上手に弾くことより、音楽を楽しむことに意識が向くと、体の力が抜けます。

「どんな演奏でも、聴けるのが楽しみだな」 結果がどうであれ、あなたの演奏を楽しみにしている――そう伝わると、お子さんは「見守られている」という安心の中で舞台に立てます。

言葉の共通点は、 「うまく弾けたら」という条件をつけないこと です。無条件に応援されていると感じられることが、いちばんの支えになります。

本番が終わったあとの、もっと大切な接し方

実は、本番前以上に大切なのが、 演奏が終わったあとの接し方 です。ここでの一言が、お子さんの「次」への気持ちを大きく左右します。

たとえ間違えても、思うように弾けなかったとしても、まず最初に伝えてほしいのは、 「よく頑張ったね」「舞台に立てて、すごいよ」 というねぎらいの言葉です。

人前で演奏すること自体が、大人でも勇気のいることです。その一歩を踏み出したこと、最後まで弾き切ったこと――それだけで、十分に称賛に値します。

やってはいけないのは、終わった直後に「あそこ間違えたね」「もっと練習しておけばよかったのに」と、反省点を口にすることです。 本番直後は、評価の時間ではありません。 まずは、やり遂げたことを一緒に喜んでください。技術的な振り返りは、先生に任せておけば十分です。

「間違えても、ちゃんと受け止めてもらえた」という経験は、お子さんの中で「本番は怖くない」という感覚を育てます。それが、次の挑戦への勇気になります。

緊張と上手に付き合う力は、一生の宝物になる

本番で緊張し、それでも舞台に立ち、演奏をやり遂げた。この経験は、音楽の上達以上に大きなものを、お子さんに与えてくれます。

プレッシャーの中で自分の力を発揮する経験 は、音楽の場だけでなく、これから先の人生のあらゆる場面で生きてきます。受験、面接、仕事でのプレゼン――大きな場面で力を出す力は、こうした小さな本番の積み重ねで育っていくのです。

だからこそ、目の前の一回の出来に一喜一憂しすぎないでください。緊張しながらも本番に向き合う経験そのものが、お子さんを確実に成長させています。親御さんは、その成長を、あたたかく見守っていてあげてください。

まとめ

  • 緊張は悪いものではなく、 真剣に向き合っている証拠
  • 「緊張しないで」「間違えないで」は 逆効果になりやすい
  • 本番前は、 努力を認め、楽しむことに目を向ける 言葉を
  • 本番後は、 結果より『やり遂げたこと』をねぎらう
  • 緊張と付き合う経験は、 一生役立つ力 になる

お子さんが本番で緊張するのは、それだけ真剣に音楽と向き合っている証です。その気持ちに寄り添い、結果ではなく挑戦そのものを認めてあげることが、親御さんにできる最大のサポートです。

Academy Customize では、発表会やコンクールに向けて、お子さんが安心して本番に臨めるよう、一人ひとりに寄り添った指導を心がけています。「本番に弱くて」「緊張しやすい子で」といったご相談も歓迎です。お子さんが自分の力を舞台で発揮できるよう、一緒にサポートしていきましょう。

参考記事

吉川 采花
Author
東京藝術大学音楽部器楽科卒業。ウィーン市立音楽芸術大学修士課程修了。Hamamelis Quartett 第二ヴァイオリン奏者。
2021年、音楽レッスンサービス Academy Customizeを立ち上げる。現在は東京を拠点に演奏活動をしながら、全国各地で後進の指導にあたっている。
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