音大受験、何から始める?準備の全体スケジュールと流れ

吉川 采花
音大受験、何から始める?準備の全体スケジュールと流れ

「音楽大学を受験したい」――そう心に決めたものの、いざ準備を始めようとすると、多くの人が立ち止まってしまいます。 「そもそも、何から手をつければいいの?」 と。

音大受験は、一般大学の受験とはかなり勝手が違います。実技があり、ソルフェージュや楽典があり、そのうえ学科試験もある。しかも、それぞれ準備にかかる時間の性質が異なります。全体像が見えないまま走り出すと、「あれもこれも間に合わない」と焦ることになりかねません。

この記事では、音大受験の準備を 「何を」「いつから」「どんな順番で」 進めればいいのか、全体のスケジュールと流れを整理してお伝えします。これから受験を目指す方と、そのご家族にとっての「道しるべ」として読んでいただければ幸いです。

まず全体像:音大受験で必要になるもの

具体的なスケジュールに入る前に、音大受験で何が必要になるのか、全体を把握しておきましょう。大きく分けて、次の4つです。

  • 実技 : 専攻する楽器や声楽の演奏。受験の中心となる、最も重要な柱
  • ソルフェージュ : 聴音 (聴いて書き取る) と視唱 (初見で歌う) の実技
  • 楽典 : 音楽の理論・ルールを問う筆記試験
  • 学科 : 国語・英語など、一般教科の試験 (大学・学部により異なる)

これらすべてを、バランスよく仕上げていく必要があります。 実技さえできればいい、というわけではない のが、音大受験の難しさであり、特徴です。

そして重要なのは、この4つは「準備に必要な期間」がそれぞれ違うということ。ここを理解することが、スケジュールを立てる出発点になります。

準備期間の「性質の違い」を知る

同じ受験科目でも、仕上げるのにかかる時間の性質はまったく異なります。ここを取り違えると、計画が崩れます。

時間をかけて育てるもの (早く始めるほど有利) 実技と、ソルフェージュの聴音・視唱です。これらは「体で覚える」「耳を育てる」種類の力で、 一夜漬けがまったく効きません。 コツコツ積み重ねた時間が、そのまま結果に表れます。

音大受験のソルフェージュ・楽典対策 ― 何をいつから始めるか →

比較的短期でも仕上げられるもの 楽典と学科です。これらは知識の習得なので、集中して取り組めば、ある程度まとまった期間で得点力を上げられます。

この違いから導かれる結論はシンプルです。 実技とソルフェージュは、できるだけ早く始める。楽典と学科は、計画的に時期を定めて取り組む。 これが、音大受験準備の大原則です。

学年別・準備スケジュールの目安

では、具体的にいつ何を始めればいいのか。あくまで一般的な目安ですが、学年を追って見ていきましょう。志望校や現在の実力によって前後するので、「大まかな流れ」として捉えてください。

中学生〜高校1年生:土台をつくる時期

この時期に最も大切なのは、 実技の基礎を固めること 、そして ソルフェージュに早めに触れておくこと です。

聴音や視唱は、この段階から少しずつ耳を育てておくと、後で大きな差になります。「まだ受験は早い」と思うかもしれませんが、耳の力は時間をかけてしか育ちません。早く始めた人が、確実に有利になります。

まだ志望校が定まっていなくても問題ありません。むしろこの時期は、いろいろな演奏に触れ、自分がどんな音楽をやりたいのかを見つめる時間でもあります。

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高校2年生:受験を「具体化」する時期

高校2年生になったら、受験がぐっと現実味を帯びてきます。この時期にやっておきたいのは、次のことです。

  • 志望校を絞り込み始める : 学校によって求められるレベルや試験内容が異なります
  • 各校の入試要項を調べる : 実技の課題曲、ソルフェージュ・楽典の出題範囲を確認
  • 楽典の学習を本格的に始める : 仕組みから理解する時間を確保
  • 実技を、受験を意識したレベルへ引き上げる

志望校が決まると、必要な準備が具体的に見えてきます。ゴールが定まることで、日々の練習にも目的意識が生まれます。

高校3年生:仕上げと総合力の時期

いよいよ受験本番の年です。この時期は、すべての科目を並行して仕上げていきます。

  • 実技を、本番で通用する完成度へ
  • ソルフェージュを、志望校の出題形式に合わせて実戦練習
  • 楽典を、過去問で得点力を確認
  • 学科の対策も並行して進める

この時期に慌てないためにも、それまでの積み重ねが物を言います。特に実技とソルフェージュは、3年生から急に伸ばそうとしても限界があります。 「高3で仕上げる」のであって、「高3で始める」のでは間に合わない のです。

志望校選びは、早すぎるくらいでちょうどいい

スケジュールの中でも、意外と軽視されがちなのが 志望校選び です。

音大・音楽高校は、学校によって校風も、求められるレベルも、試験の内容も大きく異なります。演奏家の育成に重きを置く学校もあれば、教育や音楽学など幅広い進路に対応する学校もあります。

志望校が早く決まると、その学校の試験内容に的を絞って準備できます。逆に、直前まで決まらないと、対策が総花的になり、時間を効率的に使えません。 気になる学校の情報は、早いうちから集め始めましょう。 学校説明会や講習会に足を運ぶのも、大きなヒントになります。

一人で抱えず、専門家と進めることが最大の近道

ここまで全体像をお話ししてきましたが、最後にいちばん大切なことをお伝えします。

音大受験は、 独学で完結させるのが非常に難しい 受験です。実技はもちろん、ソルフェージュの聴音・視唱は、自分では間違いに気づけません。楽典も、独学では理解が曖昧なまま暗記に走りがちです。そして何より、志望校ごとの傾向や、今の実力から逆算した計画づくりには、経験に基づく専門的な視点が欠かせません。

だからこそ、 受験を見据えた指導を受けられる環境を、早めに整えること が、結果的にいちばんの近道になります。「何から始めればいいか分からない」という段階でこそ、専門家に相談する価値があります。方向性さえ最初に定まれば、あとの努力は素直に成果につながっていきます。

まとめ

  • 音大受験に必要なのは、 実技・ソルフェージュ・楽典・学科 の4つ
  • 科目ごとに、 準備にかかる時間の性質が違う
  • 実技とソルフェージュは早く、楽典と学科は計画的に
  • 中学〜高1で土台、高2で具体化、高3で仕上げ、が大まかな流れ
  • 志望校選びは早いほど有利 。対策の的が絞れる
  • 独学は難しい。 早めに専門的な指導環境を整える ことが近道

音大受験は、やるべきことが多く、最初は途方に暮れるかもしれません。でも、全体像と流れさえつかめば、一つずつ着実に進めていけます。大切なのは、早めに動き出すこと。そして、正しい方向を最初に定めることです。

Academy Customize では、音楽大学・音楽高校の受験に向けた指導を行っています。実技はもちろん、ソルフェージュや楽典も含めて、お子さんの現在地から志望校までの道のりを、一緒に設計します。「何から始めればいいか分からない」という最初の一歩のご相談も歓迎です。まずはお気軽にお声がけください。

吉川 采花
Author
東京藝術大学音楽部器楽科卒業。ウィーン市立音楽芸術大学修士課程修了。Hamamelis Quartett 第二ヴァイオリン奏者。
2021年、音楽レッスンサービス Academy Customizeを立ち上げる。現在は東京を拠点に演奏活動をしながら、全国各地で後進の指導にあたっている。
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