肩甲骨から動かすために

弦楽器共通のボウイングの基本

吉川 采花
肩甲骨から動かすために ― 弦楽器共通のボウイングの基本

「弓は肩甲骨から動かす」。これはボウイングの基本です。そして、これは ヴァイオリンだけの話ではありません。弓を使って音を出すヴィオラ・チェロも、まったく同じ です。弓を動かす主役が肩甲骨である、という原理は、3つの楽器すべてに共通しています。プロが弾いているところを見ると、肩、肘、手首、指の関節が動いて見えると思いますが、これは各関節が柔軟になっている状態だから動いているのであって、 動きの主体は「肩甲骨」 です。

今日は、普段の生活ではあまり意識しない「肩甲骨から動かす」ことを意識するための、練習アイディアをまとめました。 弓を使う弦楽器なら、どの楽器の方も試していただけます。

肘で円を描く

弓を持たずに、肘で円を描きます。円の下半分の弧を描くときに、弓が弦に乗るイメージです。このとき大切なのは、 腕先だけで小さく回すのではなく、肩甲骨から動かして大きく円を描く こと。肩甲骨が動くと、肘が自然についてくる――その感覚を確かめてみましょう。

左手で右の肩甲骨を触る

上記の動きをしながら、左手で右の肩甲骨を触ってみましょう。肩甲骨の動きを感じられますか?また、肩、肘、手首、指の関節が柔軟になっていて、付いていくように自然に動くのが分かりますか?

肩甲骨が「動きの出発点」になっていれば、他の関節は力むことなく、後からついてきます。もし肩や肘だけで動かそうとしていると、肩甲骨はほとんど動きません。その違いを、手で触れて感じ取ってみてください。

弓を持つ

弓を持った状態で、空中で同じ動きをします。弓を持たない状態と同じ感覚で動かせていますか?これも、左手で右の肩甲骨を触ってみると、肩甲骨の動きを感じられると思います。弓を持つと、つい手先に意識が向きがちですが、あくまで動きの出発点は肩甲骨です。

楽器による違い ― 特にチェロの方へ

ここまでの3ステップは、 ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロのいずれにも共通 します。「肩甲骨から動かす」という本質は変わりません。ただし、構え方が違うぶん、意識するポイントに少し違いがあります。

ヴァイオリン・ヴィオラ は、楽器を肩と顎で支え、腕を上げた状態で弓を扱います。腕が宙にあるため、肩甲骨の動きが弓に直接伝わりやすく、この練習の効果を感じやすい構えです。ヴィオラはヴァイオリンより弓がやや長く重いので、肩甲骨から大きく動かす意識が、より豊かな音につながります。

チェロ は、座って楽器を体の前に構え、腕を下ろした自然な位置で弓を動かします。ヴァイオリンとは弓を動かす方向 (水平に近い動き) が異なりますが、 「肩甲骨から動かし、肘・手首・指がついてくる」という連動の順番は、まったく同じ です。チェロの場合、肩甲骨から動かせると、弓の元から先まで、ムラなく弦をとらえられるようになります。腕先だけで弾くと、弓の先のほうで音が細くなりがちなので、ぜひこの感覚を確かめてみてください。

どの楽器でも、共通する合言葉は一つ。 「手先ではなく、肩甲骨から」 です。

なお、この「肩甲骨から動かす」感覚は、弓の震えを防ぐことにもつながります。人前で弓が震えてしまう方は、弓が震える!を解決する もあわせて読んでみてください。手先が固まらず、体の大きな部分から動かせるようになると、震えはぐっと減っていきます。

まとめ

  • 弓を動かす主役は、手先ではなく 肩甲骨
  • 肘で円を描く → 肩甲骨を触る → 弓を持って動かす の3ステップで感覚をつかむ
  • 肩甲骨が出発点になれば、肩・肘・手首・指は自然についてくる
  • これは ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロに共通 する。チェロは構えが違っても連動の順番は同じ

「肩甲骨から動かす」感覚が身につくと、ボウイングがなめらかになり、音にも余裕と深みが生まれます。普段の生活では意識しにくい部分なので、ぜひ繰り返し練習して、体に覚え込ませてくださいね。

Academy Customize では、ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロのいずれも、それぞれの専門家が指導しています。ボウイングのような体の使い方は、実際に見てもらうことで、ぐっと理解が深まります。「弓がうまく使えない」「音にムラがある」といったお悩みも、ぜひ体験レッスンでご相談ください。

吉川 采花
Author
東京藝術大学音楽部器楽科卒業。ウィーン市立音楽芸術大学修士課程修了。Hamamelis Quartett 第二ヴァイオリン奏者。
2021年、音楽レッスンサービス Academy Customizeを立ち上げる。現在は東京を拠点に演奏活動をしながら、全国各地で後進の指導にあたっている。
講師プロフィールを見る →

体験レッスンを受けてみませんか?

プロの講師が、あなたに合ったレッスンをご提案します。

体験レッスンを申し込む