子どもが楽器を練習しない…そんなときに親ができること

吉川 采花
子どもが楽器を練習しない…そんなときに親ができること

「せっかく習わせているのに、家でまったく練習しない」 「毎日『練習しなさい』と言うのに疲れてしまった」 「このまま続けさせていいのか、正直迷っている」

お子さんに楽器を習わせている親御さんから、本当によく聞くお悩みです。もしあなたが今、同じように悩んでいるなら、まず最初にお伝えしたいことがあります。

練習しない子は、あなたのお子さんだけではありません。 むしろ、それが普通です。楽器を習っているほとんどの子が、程度の差こそあれ、この時期を通ります。だから、「うちの子だけできない」「私の育て方が悪いのかも」と、ご自身を責める必要はまったくありません。

この記事では、なぜ子どもは練習しないのか、そして親としてどう関わればいいのかを、具体的にお話しします。読み終えるころには、肩の力が少し抜けているはずです。

まず知っておきたい: 子どもが練習しないのは「当たり前」

大人でも、気の進まないことを毎日続けるのは大変です。ましてや子どもにとって、楽器の練習は「やらなければいけないこと」の一つ。遊びたい気持ちや、他にやりたいことがあるなかで、自分から進んで練習するほうが、実は特別なのです。

大切なのは、 練習しないことを「やる気がない」「向いていない」と結びつけないこと です。今練習しないからといって、音楽が嫌いなわけでも、才能がないわけでもありません。多くの場合、原因はもっと具体的で、そして解決できるものです。

では、その原因を一つずつ見ていきましょう。

「練習しない」の裏にある、本当の理由

子どもが練習に向かわないとき、その裏にはたいてい理由があります。よくあるものを挙げてみます。

理由1: 何をすればいいか分からない 「練習しなさい」と言われても、子どもは何をどうすればいいか分かっていないことがあります。 「何を、どこまでやればいいか」があいまい だと、そもそも取りかかれません。

理由2: 難しすぎて、楽しくない 今取り組んでいる曲や課題が、その子にとって難しすぎると、弾いても弾いてもうまくいかず、練習が「うまくいかない体験」の繰り返しになってしまいます。これでは向かいたくなくて当然です。

理由3: できるようになっている実感がない 少しずつ上達していても、その変化は本人には見えにくいものです。 成長を実感できない と、努力する意味を見失いやすくなります。

理由4: 練習が「叱られる時間」になっている 「そこ違うでしょ」「もっとちゃんと弾いて」――よかれと思った声かけが、練習を苦痛な時間に変えてしまっていることがあります。

理由が分かれば、打つ手が見えてきます。次は、家庭でできる具体的な工夫です。

家庭でできる、5つの工夫

1. 「時間」を決めて、生活に組み込む

「気が向いたら練習する」では、ほとんどの子は向かいません。効果的なのは、 練習を『習慣』にしてしまう ことです。

「夕ご飯の前に10分」「学校から帰ったらすぐ」など、毎日の生活の決まった場所に練習を組み入れます。歯みがきと同じように、「その時間になったらやるもの」になれば、いちいち気合いを入れる必要がなくなります。

2. 楽器を「すぐ弾ける状態」にしておく

意外に大きいのが、環境です。楽器がケースにしまわれて棚の奥にあると、出すだけでひと苦労。それだけで練習のハードルが上がります。

可能なら、 楽器をすぐ手に取れる場所に、いつでも弾ける状態で置いておく 。この小さな工夫が、「ちょっと弾いてみようかな」を生みます。

3. 目標を、うんと小さくする

「1曲通して弾けるように」ではなく、「この2小節だけ」「今日はこの1フレーズ」。 目標を小さく区切る と、達成しやすくなり、「できた」という手応えが積み重なります。

小さな成功体験の積み重ねこそが、次の練習への意欲を生みます。

4. 叱るのではなく、「聴く人」になる

これが、いちばん大切かもしれません。親の役割は、間違いを指摘する先生ではありません。 お子さんの演奏を聴いてくれる、たった一人の観客 です。

「今の、きれいだったね」「昨日より上手になってる」。上手下手ではなく、取り組んだこと自体を認める言葉が、子どもを何より支えます。人は、聴いてくれる人がいると、弾きたくなるものです。

5. できた日を「見える化」する

練習した日にシールを貼る、カレンダーに印をつける――そんな単純なことでも、子どもには効果があります。 自分の頑張りが目に見える形で残る と、それ自体が励みになり、「続けたい」という気持ちにつながります。

やってはいけない、たった一つのこと

たくさんの工夫を紹介しましたが、逆に「これだけは避けたい」ということもお伝えします。それは、 練習をめぐって、親子の関係を悪くしてしまうこと です。

練習させたい一心で、毎日叱り、ときには他の子と比べ、音楽の時間が親子のケンカの種になる――これは、いちばん避けたい結末です。なぜなら、そうなると子どもの中で「音楽=つらいもの、叱られるもの」という結びつきができてしまうからです。

楽器を習わせる本当の目的を、思い出してみてください。それは、プロにすることではなく、 音楽を好きになり、一生の宝物にしてもらうこと ではないでしょうか。目先の練習量のために、音楽そのものを嫌いにさせてしまっては、本末転倒です。

うまくいかない日は、「今日はいいか」と手放す勇気も大切です。長い目で見れば、音楽を嫌いにならずに続けることのほうが、はるかに価値があります。

それでも悩んだら、先生に相談を

家庭でいろいろ試しても、うまくいかないことはあります。そんなときは、 一人で抱え込まず、レッスンの先生に相談してください。

「家で練習してくれないんです」と正直に伝えて大丈夫です。それは決して恥ずかしいことではなく、先生にとっても大切な情報です。課題が難しすぎるなら調整できますし、その子に合ったやる気の引き出し方を、一緒に考えることができます。

そもそも、家庭ですべてを背負う必要はありません。 練習の習慣づけも、モチベーションの管理も、教室と家庭が力を合わせて取り組むもの です。よい先生は、必ず一緒に考えてくれます。

まとめ

  • 子どもが練習しないのは ごく当たり前 。親の育て方のせいではない
  • 「練習しない」の裏には、 難しすぎる・成長を実感できない などの理由がある
  • 時間を決める・すぐ弾ける環境・小さな目標 で、練習を習慣に
  • 親の役割は、叱る先生ではなく 聴いてくれる観客
  • いちばん避けたいのは、 音楽を『嫌いなもの』にしてしまうこと
  • うまくいかないときは、 先生に相談 を。家庭だけで抱えなくていい

練習をめぐる悩みは、多くの親御さんが通る道です。焦らず、お子さんのペースを見守りながら、音楽との幸せな関係を育てていってあげてください。

Academy Customize では、お子さん一人ひとりの個性やペースに合わせたレッスンを大切にしています。「家で練習してくれない」といったご家庭でのお悩みも、遠慮なくご相談ください。教室と一緒に、お子さんが音楽を好きでい続けられる関わり方を、考えていきましょう。

吉川 采花
Author
東京藝術大学音楽部器楽科卒業。ウィーン市立音楽芸術大学修士課程修了。Hamamelis Quartett 第二ヴァイオリン奏者。
2021年、音楽レッスンサービス Academy Customizeを立ち上げる。現在は東京を拠点に演奏活動をしながら、全国各地で後進の指導にあたっている。
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