初めてのヴィブラート
手首の脱力から始める第一歩

ヴァイオリンの音が、ゆったりと揺れて、豊かに響く――あの「ヴィブラート」に憧れて、練習を続けている方は多いのではないでしょうか。でも、いざやってみると、「手が固まってうまく揺れない」「不自然にガクガクしてしまう」と、つまずく方がとても多いテクニックでもあります。
実は、ヴィブラートの上達には、 いきなり楽器で揺らそうとしないこと が大切です。今日は、その第一歩として、 楽器を持たずにできる準備運動 をお伝えします。焦らず、一つずつ進めていきましょう。
その前に ― ヴィブラートって、どういう動き?
準備運動に入る前に、ヴィブラートがどんな仕組みか、簡単に知っておきましょう。ヴィブラートは、指で押さえた音を、 わずかに高く・低く、細かく揺らす ことで、音に表情と豊かさを与えるテクニックです。そして、その揺れを生み出しているのが、 手首のしなやかな動き です。
ここでいちばん大切なのは、 力を抜くこと 。手や腕に力が入っていると、手首は柔らかく揺れてくれません。つまり、ヴィブラートの練習は、「揺らす練習」であると同時に、 「力を抜く練習」 でもあるのです。このことを頭に置いて、準備運動を始めましょう。
ステップ1: 脱力した左手を作る
まずは、力の抜けた左手の状態を作ります。
- 左腕を、肩の高さまで上げます
- 左手の親指を、上に向けます
- その親指の第一関節を、右手で上からつかみます
このとき、いちばん意識してほしいのが、 左腕を完全に脱力させる ことです。左手は、右手にぶら下がって「引っかかっているだけ」の状態。左腕の力で支えるのではなく、右手に預けてしまうイメージです。
チェックポイント
左腕の力が抜けていると、右手を離したら左手がストンと落ちるくらい、だらんとしているはずです。もし左腕に力が入っていたら、一度手を下ろして、深呼吸してからやり直しましょう。
ステップ2: 手首をゆっくり前後に動かす
脱力した状態のまま、 左手首を、前後にゆっくりと動かします 。
イメージは、手のひらで空気をやさしく「あおぐ」ような動き。あるいは、手首から先だけが、ゆらゆらと揺れるような感覚です。ポイントは、 あくまでゆっくり、大きく 動かすこと。
チェックポイント
手首を動かしている間も、 左腕の筋肉はリラックスしたまま であることを、必ず確認してください。腕に力が入ってきたら、それはやりすぎのサインです。「腕は脱力、動くのは手首だけ」――これが守れているかが、いちばん大事なところです。この「脱力したまま手首を揺らす」感覚こそ、ヴィブラートの土台になります。
ステップ3: だんだん速く、そして小さくしていく
ゆっくり大きく揺らせるようになったら、いよいよ仕上げです。 動きを、少しずつ速くしていきます。 そして、速くするのと同時に、 揺れの幅を、だんだん小さくしていきます。
最初は大きくゆっくりだった揺れを、「速く・小さく」へと変えていく。最終的には、 ごく細かく、最小限の揺れ にまで小さくできることを目指します。この「速くて小さい揺れ」が、実際の演奏で使うヴィブラートの動きに近づいていきます。
チェックポイント
速くしていっても、腕に力が入らないこと。速くしようと焦ると、つい力んでガクガクしてしまいます。もし力んできたら、またステップ2の「ゆっくり大きく」に戻って構いません。 行ったり来たりしながら、少しずつ 進めましょう。
焦らず、繰り返すことが大切
ヴィブラートは、多くの人が憧れる一方で、習得に時間のかかるテクニックです。すぐにできなくても、まったく心配いりません。まずは今日の準備運動で、 「脱力したまま手首を揺らす」感覚 を、繰り返し体に覚え込ませてください。この土台ができていれば、楽器を持って実際に弦の上で揺らす段階に進んだとき、ぐっとスムーズになります。
楽器を持たずにできる練習なので、テレビを見ながらでも、ちょっとした空き時間にでも取り組めます。毎日少しずつ続けてみてくださいね。
参考文献: 『ヴァイオリンのためのヴィブラート教本』ズデニェク・ゴラ著 (音楽之友社)
Academy Customize では、ヴィブラートのような憧れのテクニックも、お一人おひとりの手の状態や進み具合に合わせて、段階を追って丁寧にお伝えしています。「独学だと、今のやり方が合っているか不安」という方は、ぜひ体験レッスンでお確かめください。実際に手の動きを見てもらうことが、上達への近道です。
