弓が震える!を解決する

弦楽器共通の原因と対策

吉川 采花
弓が震える!を解決する ― 弦楽器共通の原因と対策

弦楽器を弾く人なら、一度は経験がある「弓が震える…!」という悩み。これはヴァイオリンだけの問題ではありません。ヴィオラでもチェロでも、弓を使って音を出す楽器である以上、同じように起こります。そして、 原因も対策も、3つの楽器に共通しています。 今日は、弓が震える原因と対策を考えてみたいと思います。楽器ごとの補足も交えながらお話しするので、どの弦楽器を弾く方も参考にしてみてください。

原因

なぜ、弓が震える状態が起きるのでしょうか。自身の経験からも、人前で弾くときなど、緊張したときに震えることが多いように思います。では、緊張したときと通常時では、何が違うのでしょうか。

精神の状態が違うのはもちろんですが、体にも変化が起きています。 体が固まり、筋肉が収縮した状態 になるのです。肩甲骨がうまく動かせなかったり、手首や肘、指の関節が固まったり、膝が曲がらず突っ張ったように感じたり――。こうして右手 (弓を持つ手) が弓を「持っている」だけの状態になったとき、弓は弦の上でバウンドを始めます。簡単に言えば、 「自分の体なのに、自分でコントロールできない状態」 になったとき、人は緊張していると感じ、弓も震えるのではないでしょうか。

楽器による違い

この「体が固まると弓が震える」という原理は、 3つの楽器すべてに共通 です。ただし、震えの現れ方には少し違いがあります。

ヴァイオリン・ヴィオラ は、楽器を肩と顎で支えながら、腕を上げた状態で弓を扱います。腕が宙にある姿勢なので、肩や腕が固まると、その震えが弓に伝わりやすい傾向があります。

チェロ は、座って楽器を体の前に構え、腕を下ろした自然な位置で弓を動かします。姿勢としては安定しやすいのですが、そのぶん 腕の重みが乗りすぎたり、逆に肩に力が入ったりすると、震えや弓の跳ねにつながります 。どの楽器でも、「固まり」が敵であることは変わりません。

対策

ということは、人前でも体が固まらず、自分の体をコントロールできる状態を維持できれば、弓は震えず、緊張も感じにくくなるのではないか――という仮説が立てられます。そもそも、通常時でさえ「自分の体を完全にコントロールできている」と言い切れる人は、少ないのではないでしょうか。「手首を柔らかく」「肩甲骨から弓を動かして」「肘や腕の重みを使って」とレッスンで言われたこと、ありませんか?つまり、 緊張したときの対策だけをしていても、弓の震えは抑えられません。 大切なのは、次の2つです。

  • 日頃から、すべての関節が自由に動ける状態で弾くこと
  • 弓を「持つ」のではなく、弦に「乗せる」状態で弾くこと

これこそが、最大の対策だと考えます。普段からこの状態で弾けていれば、緊張する場面でも、体が固まりにくくなります。

「関節を自由に動かす」といっても、具体的にどこから動かせばいいの? と感じた方は、肩甲骨から動かすために を参考にしてみてください。弓を動かす主役である「肩甲骨」から動かせるようになると、手先の力みが抜け、震えの根本的な解消につながります。

そして、弓を弦に「乗せて」弾けるようになると、震えが止まるだけではありません。 楽器をもっともっと鳴らして、倍音を豊かに出し、より魅力的な音で弾くことができる ようになるのです。震えの解消は、良い音への入り口でもあります。

練習方法

「そもそも、弓を弦に『乗せる』感覚がよく分からない!」

「弓を『持つ』のは当たり前じゃないの?」

そんな声が聞こえてきそうなので、「乗せる」感覚をつかむための練習をしてみましょう。 この練習は、3つの楽器すべてで行えます。

  1. 弓元を、隣り合う弦の1本に置きます (ヴァイオリン・ヴィオラならA線、チェロならD線あたりが分かりやすいです)
  2. 親指を弓から離し 、弓の木の部分と同じくらいの高さにします
  3. そのまま、 いちばん高い弦からいちばん低い弦まで 、弓を置き替えて行ったり来たりしてみましょう

いかがですか? 親指の支えがなくても弓が弦に乗っていられるのは、「持って」いるのではなく「乗せて」いるからです。この感覚こそが、震えを防ぐ土台になります。弓を落とすのが心配な場合は、絨毯やラックなど、落としても差し支えのない場所で行ってください。「余裕だった!」という方は、親指を離したまま弓を先まで動かし、また元に戻ってくる ロングトーン の練習もしてみてください。弓の全体を通して「乗せる」感覚を保てるようになると、ぐっと安定します。

楽器による補足

チェロ は弓が重く、腕の重みを自然に使いやすい楽器です。「乗せる」感覚は、実はヴァイオリン・ヴィオラよりつかみやすい面があります。重い弓の重量を、そのまま弦に預けるイメージを持ってみてください。

ヴィオラ もヴァイオリンより弓がやや重いため、その重みを利用して「乗せる」と、音に深みが出ます。「軽く持ち上げようとする」のではなく、「重さを弦に委ねる」意識が、どの楽器でも共通のコツです。

まとめ

今回の内容を振り返ります。

  • 弓が震えるのは、緊張で 体が固まり、コントロールを失う から
  • 対策は、 日頃から関節を自由に保ち、弓を「乗せる」 こと
  • 親指を離す練習で、「乗せる」感覚を体に覚えさせる
  • これらは ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロに共通 する

弓が震えるのは、決してあなたの技術が劣っているからではありません。体の使い方のコツをつかめば、必ず改善していきます。

Academy Customize では、ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロのいずれも、それぞれの専門家が指導しています。レッスンでは、あなたの体の状態や楽器の構えを見ながら、より具体的なアドバイスをいたします。「弓の震えをどうにかしたい」という方は、ぜひ体験レッスンからお申し込みください。

吉川 采花
Author
東京藝術大学音楽部器楽科卒業。ウィーン市立音楽芸術大学修士課程修了。Hamamelis Quartett 第二ヴァイオリン奏者。
2021年、音楽レッスンサービス Academy Customizeを立ち上げる。現在は東京を拠点に演奏活動をしながら、全国各地で後進の指導にあたっている。
講師プロフィールを見る →

体験レッスンを受けてみませんか?

プロの講師が、あなたに合ったレッスンをご提案します。

体験レッスンを申し込む