弓のコンタクトポイントとは?

弦楽器共通の「一番鳴る場所」

吉川 采花
弓のコンタクトポイントとは? ― 弦楽器共通の「一番鳴る場所」

左手には「ポジション」がありますよね。第1ポジション、第2ポジション、第3ポジション…と、押さえる場所によって呼び方が変わります。実は、 弓の側にも、その音が一番よく鳴る「コンタクトポイント」 があるのをご存じですか? コンタクトポイントとは、 弓の毛が弦に触れる位置 のこと。駒 (ブリッジ) に近いか、指板に近いか、その位置によって、音の鳴り方が大きく変わります。

そして、この考え方は ヴァイオリンだけのものではありません。ヴィオラ・チェロも含め、弓で弦をこすって音を出す楽器すべてに共通 します。今日は、このコンタクトポイントについてお話しします。知っておくと、音づくりの幅がぐっと広がりますよ。

基本ルール: ポジションが上がると、駒寄りに

まず、いちばん大切な基本ルールから。 ポジションが上がる (=高い音を弾く) につれて、一番鳴るコンタクトポイントは、駒寄りに移っていきます。

これには理由があります。高い音を弾くとき、指で押さえることで、実際に振動している弦の長さは短くなります。短くなった弦を豊かに鳴らすには、弓を駒側に寄せて、しっかり張った部分をとらえる必要があるのです。だから、 「ハイポジションになると音がぼやけてしまう…」 という方は、弓の位置を疑ってみてください。弓を少し駒寄りにずらして、一番鳴るポイントを探ってみましょう。それだけで、音がクリアに芯を持つことがあります。

楽器による違い

この「高い音ほど駒寄り」というルールは、 3つの楽器すべてに共通 です。ただし、その効果の現れ方には違いがあります。

チェロ は、弦が長く、駒から指板までの距離もヴァイオリン・ヴィオラよりずっと長い楽器です。そのぶん、 コンタクトポイントを動かせる幅が広く、位置による音の変化も大きく 現れます。ハイポジションで音がやせてしまうときは、思い切って駒寄りに寄せると、驚くほど音が変わることがあります。

ヴィオラ は、ヴァイオリンより弦が太く長いため、こちらもコンタクトポイントの影響を感じやすい楽器です。ヴァイオリンから持ち替えた方は、「同じつもりでも少し駒寄りが合う」と感じることがあるかもしれません。

どの楽器でも、 自分の楽器・その音程で「一番鳴る場所」を、耳で探す という姿勢が大切です。

応用: あえてポイントをずらして表現する

ここまでは「一番よく鳴る場所」の話でした。でも、音楽の表現の上では、 あえてコンタクトポイントをずらしたほうが、素敵になる場合 もあります。これは、コンタクトポイントを知っているからこそできる、一歩進んだ表現です。

指板寄りにする ― やわらかく、かすんだ音に

霧がかかったような、ぼんやりとした情景 を表現したいとき。弓を 指板寄り にずらすと、音の芯がやわらぎ、ふわっとかすんだ音色になります。イメージにぴったり近づくはずです。弱音でやさしく歌いたいときや、遠くから聞こえてくるような雰囲気を出したいときにも効果的です。

弓を斜めに流す ― 音を減衰させる

ダウン (弓を下げる方向) で 「f → subito p」 (強い音から、突然弱い音へ) を弾くとき。弓を弓先に向かって、 わざと斜めに流すように 動かすと、音がスッと減衰し、効果的に表現できます。急に音を小さくする場面で、単に圧力を抜くだけでなく、コンタクトポイントを移動させることで、より自然でドラマチックな変化が作れます。

まとめ

  • 弓にも、音が一番よく鳴る 「コンタクトポイント」 がある
  • 基本ルールは 「ポジションが上がるほど、駒寄り」
  • ハイポジションで音がぼやけるときは、 弓を駒寄りに 寄せてみる
  • あえて指板寄りにずらす と、やわらかく霧のような音に
  • これらは ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロに共通 する。特にチェロは効果が大きい

コンタクトポイントを知った上で、あえてポイントをずらす。そうすると、さらに一段上の表現ができ、楽器を弾く楽しみが増えるはずです!

Academy Customize では、ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロのいずれも、それぞれの専門家が指導しています。コンタクトポイントのような音づくりのコツは、実際に音を聴いてもらいながら学ぶのが一番です。「もっと良い音で弾きたい」「表現の幅を広げたい」という方は、ぜひ体験レッスンでご相談ください。

吉川 采花
Author
東京藝術大学音楽部器楽科卒業。ウィーン市立音楽芸術大学修士課程修了。Hamamelis Quartett 第二ヴァイオリン奏者。
2021年、音楽レッスンサービス Academy Customizeを立ち上げる。現在は東京を拠点に演奏活動をしながら、全国各地で後進の指導にあたっている。
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