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『威風堂々』はなぜ卒業式で歌われる?歌詞に込められた意味
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『威風堂々』はなぜ卒業式で歌われる?歌詞に込められた意味

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名曲解説

卒業式の日の体育館には、独特の空気があります。

まだ冬の冷たさが残る朝。
少し硬い制服。
椅子を引く音。
友人たちの笑い声。
そして、「もう戻れない」という感覚。

そんな空間で流れ始めるのが、エルガー《威風堂々》です。

再生しながら記事を読み進めると、音楽と記事を同時にお楽しみ頂けます

この曲を聴くと、多くの人が「卒業式」を思い浮かべるのではないでしょうか。

堂々としていて、華やか。 それでいて、どこか切ない。

前を向かなければならないのに、過去を振り返ってしまう。 《威風堂々》には、そんな“旅立ちの日の感情”が詰まっています。

そして日本では、この曲に歌詞をつけて歌われることも少なくありません。

今回は、《威風堂々》がなぜ卒業式の定番になったのか、そして多くの人の心を動かし続ける理由を、演奏家としての視点も交えながら紐解いていきます。

《威風堂々》とはどんな曲なのか

《威風堂々(Pomp and Circumstance)》は、イギリスの作曲家エドワード・エルガーによって作曲された行進曲集です。

特に有名なのが、第1番 ニ長調。

1901年に初演され、大成功を収めました。

タイトルの「Pomp and Circumstance」は、「威厳」や「華やかな儀式」を意味します。

実際、この曲には式典の空気があります。

王室行事。
表彰式。
卒業式。
人生の節目。

単なる“元気なマーチ”ではありません。

誇らしさと緊張感、そして少しの寂しさが同居しています。

だからこそ、この曲は「別れ」と「門出」の場面に不思議なほど似合うのです。

卒業式で有名になった理由

《威風堂々》が卒業式の定番になった理由の一つは、その旋律の力にあります。

特に有名なのが、中間部で現れる壮大なメロディです。

ゆったりと広がりながら、少しずつ高揚していく旋律。

まるで、

「これまで歩いてきた道を振り返りながら、新しい世界へ進んでいく」

ように聴こえます。

卒業式というのは、不思議な時間です。

嬉しいだけではありません。

終わってほしくない気持ち。
変わってしまう怖さ。
それでも前へ進まなければならない現実。

《威風堂々》は、その複雑な感情を言葉なしで表現してしまうのです。

しかもこの曲は、“明るすぎない”。

完全に祝祭的な音楽ではありません。

どこか陰影があります。

だから、人の心に深く残るのでしょう。

実は「歌詞」が存在する

《威風堂々》には、有名な歌詞があります。

イギリスでは、

“Land of Hope and Glory”

というタイトルで広く知られています。

これはイギリスの愛国歌として歌われているもので、エルガー自身の音楽に、詩人A・C・ベンソンが歌詞をつけたものです。

壮大なメロディに乗せて、

  • 希望
  • 誇り
  • 未来
  • 国への愛

が歌われます。

ただ、日本の卒業式で歌われる場合は、この英語詞そのものではなく、日本語のオリジナル歌詞が使われることも多いです。

学校ごとに独自の詞をつけていることもあります。

つまり、《威風堂々》は「器」のような音楽なのだと思います。

堂々とした旋律があるからこそ、それぞれの学校、それぞれの人生の物語を乗せることができる。

だから卒業式で長く愛されてきたのでしょう。

なぜあの旋律はこんなにも感動的なのか

私は《威風堂々》を演奏するたび、「歩幅の大きい音楽」だと感じます。

音が急がないのです。

一音一音が、しっかり地面を踏みしめるように進んでいく。

だから聴いている側も、自然と呼吸が深くなります。

特に有名な中間部は、音域が少しずつ広がりながら、旋律が空へ向かって伸びていきます。

これは、人間が本能的に“解放感”を感じやすい形です。

狭い場所から広い場所へ。 低い場所から高い場所へ。

その流れが、「未来へ向かう感覚」と重なるのです。

さらに、この旋律には“余白”があります。

感情を押しつけすぎない。

だからこそ、聴く人それぞれが、自分の思い出を重ねられるのです。

演奏者が感じる《威風堂々》の難しさ

《威風堂々》は、聴くと華やかですが、演奏する側にとっては非常に神経を使う曲です。

なぜなら、「堂々と聴かせる」ということは、実はとても難しいからです。

少しでも急ぐと、軽くなってしまう。 逆に重すぎると、音楽が動かなくなる。

特に弦楽器は、音を長く保ちながらも、前へ進む推進力を失わないように弾かなければなりません。

卒業式で演奏される場合は、さらに独特の緊張感があります。

生徒が歩く速度。
式の進行。
会場の空気。

音楽だけで完結しないのです。

以前、式典でこの曲を演奏したとき、入場してくる生徒の表情を見ながら、「音楽は人の人生の場面に寄り添うものなのだ」と強く感じました。

涙をこらえている人。
少し照れくさそうな人。
まっすぐ前を向いて歩く人。

《威風堂々》は、そのすべてを包み込むように鳴っていました。

現代でも愛され続ける理由

《威風堂々》は100年以上前の曲です。

それでも今なお、多くの学校や式典で使われ続けています。

なぜでしょうか。

それは、この曲が「人生の節目」を描いているからだと思います。

人は何歳になっても、

  • 別れ
  • 新しい環境
  • 不安
  • 希望

を繰り返します。

卒業だけではありません。

就職。
引っ越し。
転職。
新しい挑戦。

人生は、何度も“卒業式”を迎えるのです。

《威風堂々》は、そのたびに寄り添ってくれる音楽です。

だから時代が変わっても、消えないのでしょう。

音楽は、人生の節目を支えている

卒業式が終わったあと、不思議と音楽だけが記憶に残っていることがあります。

体育館の匂い。
ざわめき。
友人の横顔。

その奥で、《威風堂々》が鳴っている。

音楽は、人生の風景に静かに入り込みます。

そして何年後かに再びその曲を聴いたとき、一瞬で当時の感情を連れてくるのです。

それは、とても不思議で、美しいことだと思います。

もしこれまで《威風堂々》を「卒業式の曲」としか思っていなかったなら、ぜひ改めてじっくり聴いてみてください。

きっとその中に、“人生を前へ進める力”のようなものが見えてくるはずです。

音楽を「聴く」だけでなく、「一緒に奏でてみませんか?」

《威風堂々》のような音楽には、一人で聴くだけでは味わえない魅力があります。

誰かと呼吸を合わせること。
音を受け渡すこと。
同じフレーズを一緒に作り上げること。

アンサンブルには、“人と音楽を共有する喜び”があります。

Academy Customizeでは、ヴァイオリンをはじめとしたクラシック音楽のレッスンに加え、室内楽レッスンも行っています。

「一人で弾くのとは違う楽しさを知りたい」
「室内楽に挑戦してみたい」
「誰かと一緒に音楽を作ってみたい」

そんな方にもおすすめです。

また、発表会では講師とのアンサンブル出演も可能です。 オーケストラや室内楽のように、音を重ねる楽しさを実際に体験していただけます。

《威風堂々》のように、人と人が音を通してつながる感覚を、ぜひ実際に味わってみてください。

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著者
吉川 采花
東京藝術大学音楽部器楽科卒業。ウィーン市立音楽芸術大学修士課程修了。Hamamelis Quartett 第二ヴァイオリン奏者。
2021年、音楽レッスンサービス Academy Customizeを立ち上げる。現在は東京を拠点に演奏活動をしながら、全国各地で後進の指導にあたっている。

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