ヴァイオリンとチェロの間に位置し、オーケストラや室内楽の中で常に重要な役割を果たしてきた「ヴィオラ」。しかしながら、一般的な知名度はヴァイオリンほど高くなく、「ヴィオラって何?」と聞かれることも少なくありません。 今回は、この魅力あふれる楽器――ヴィオラについて、プロの視点からじっくりご紹介していきます。
1. ヴィオラってどんな楽器?
ヴィオラは、ヴァイオリンとよく似た形をしていますが、少しだけ大きく、音域も低め。調弦は、上からA-D-G-C(ラ-レ-ソ-ド)と、ヴァイオリンより完全五度低くなっています。サイズ的にはちょうどヴァイオリンとチェロの中間のような存在ですが、ヴィオラにはこのサイズだからこその、独特で豊かな音色があります。
その響きは、暖かく、深く、柔らかい。まるで人の声の中音域を思わせるような、安心感と包容力のある音色は、他の弦楽器にはない魅力です。
2. オーケストラや室内楽での役割
ヴィオラは、オーケストラでは「中音域の支え役」として欠かせない存在です。メロディを担うことは他の楽器に比べると多くはないものの、ヴァイオリンやチェロ、木管楽器とのハーモニーをつなぐ役目を果たしています。この「中声部」の美しさに気づくと、音楽を聴く楽しみが何倍にも広がるはずです。
また、室内楽では、アンサンブルの中心的な存在になることもしばしば。ヴィオラが音楽の方向性を決める場面も多く、演奏者としてはとてもやりがいのあるポジションです。
3. ソロ楽器としてのヴィオラ
「ヴィオラってソロ曲あるの?」と思われる方も多いかもしれません。確かに、ヴァイオリンやピアノのようにソリストとしての露出は多くありませんが、ヴィオラ独自の魅力を活かしたソロ作品も数多く存在します。
例えば、バルトークの「ヴィオラ協奏曲」や、ヒンデミット、ウォルトンなど20世紀の作曲家はヴィオラに特別な愛着を持ち、ソロ作品を残しています。また、近年では現代作曲家による新しいレパートリーも増え、ヴィオラ奏者の活躍の場は確実に広がっています。
4. ヴィオラの魅力的な音色
ヴィオラの音色は、よく**「木のぬくもりのような音」「内面に語りかけるような声」**と表現されます。ヴァイオリンの華やかさやチェロの重厚さとは異なり、奥ゆかしさと、親密な温かさを感じさせる音です。
この音色は、独奏でも合奏でも、人の心を癒す力を持っています。特に静かなパッセージや、感情を込めた旋律では、ヴィオラならではの深みが際立ちます。
また、音の立ち上がりが柔らかく、鋭すぎないため、他の楽器とのアンサンブルにもとてもよくなじむのです。
5. ヴィオラ奏者としての喜び
ヴィオラは「縁の下の力持ち」とも言われる楽器ですが、そこには演奏者だけが味わえる喜びがあります。
アンサンブルの中で全体の響きを聴きながら、自分の音で調和を作り出していく作業は、まるで音楽を内側から支え、育てていくような感覚。目立たないからこそ、自分の役割を深く理解し、周りとの対話を大切にする――それがヴィオラ奏者の醍醐味です。
また、ヴィオラは音域が広く、技巧的な曲も少なくありません。音楽的・技術的にとても奥が深く、学べば学ぶほど面白くなる楽器です。
6. 子どもにもおすすめ?ヴィオラのはじめ方
「ヴィオラって大きくて子どもには無理?」と心配される方もいますが、実は子ども用の小型ヴィオラも存在します。ヴァイオリンと同様、1/4、1/2などのサイズがあり、身体に合った楽器を選べば、小学生でも無理なく始められます。
また、すでにヴァイオリンを学んでいる方がヴィオラに持ち替えるケースも多く、ヴァイオリン経験者にとっては比較的スムーズに移行できる楽器でもあります。新しい音域や役割を体験できるので、音楽の幅が広がります。
7. ヴィオラが教えてくれること
ヴィオラという楽器は、音楽における「聴く力」「支える力」「バランス感覚」を教えてくれる存在です。
目立つことよりも、全体の中で美しく響くことを目指す姿勢。個としてだけでなく、他者との調和の中で自分を活かす喜び。ヴィオラを学ぶことで、音楽に対する見方が変わり、人生においても新しい価値観が芽生えるかもしれません。
おわりに
ヴィオラは、ヴァイオリンほどの華やかさや、チェロのような存在感こそないかもしれません。しかし、その音色や役割の中には、深い美しさと豊かな個性が詰まっています。
音楽の世界をもう一歩深く知りたい方、アンサンブルの喜びを味わいたい方、そして何より、「聴くこと」や「支えること」に美しさを感じる方には、ぜひ一度ヴィオラに触れてみていただきたいと思います。
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