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音がひとつになる瞬間——オーケストラで奏でる喜び
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音がひとつになる瞬間——オーケストラで奏でる喜び

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室内楽・オーケストラ

はじめに

楽器を習っていると、「もっと上手くなりたい」「あの曲を弾けるようになりたい」といった目標が自然と生まれてきます。でも、ある程度ひとりで弾けるようになると、ふと立ち止まってしまうこともありませんか?そんなとき、ぜひ体験してほしいのが「オーケストラで演奏すること」です。

オーケストラというと、クラシックのプロが集まる難しそうな世界……そんなイメージを抱いている方も多いかもしれません。でも実は、学生オーケストラや市民オーケストラ、アマチュアの合奏団体など、門戸は広く開かれています。

今回は、楽器を学ぶ人がオーケストラで演奏することの魅力について、私自身の体験も交えながらお伝えしていきます。音楽が「ひとりで奏でるもの」から「みんなで創るもの」になる、その瞬間の感動を、ぜひ知っていただけたら嬉しいです。

1. 音楽が立体になる感覚

ソロや個人練習では、どれだけ情感を込めて演奏しても、出てくる音は一つのラインです。でも、オーケストラではその音が、縦にも横にも、立体的に広がっていきます。

ある日、私はヴァイオリンで初めてオーケストラに参加しました。そのときに感じたのは、「音に包まれている」という感覚。周囲から聞こえるヴィオラとチェロの音が、まるで波のように自分を通り抜けていき、自分の音もその波の一部になっていく。

ハーモニーの中で「今、自分が音楽の一部になっている」と感じられる体験は、個人練習では得がたいものです。特にホルンやファゴット、コントラバスなどの響きが重なったときには、音楽がまるで生き物のように動き出す感覚すらありました。

2. 仲間と創る音楽の面白さ

オーケストラには、年齢も経歴も異なるさまざまな人が集まります。それぞれが違う背景を持ち、違うペースで練習してきた仲間と、一つの曲を創り上げていく。そのプロセスそのものが、ものすごく面白いのです。

合奏では、テンポや音量、ニュアンスを合わせるために、互いの音をよく聴くことが求められます。最初はバラバラだった音が、リハーサルを重ねるごとに少しずつ溶け合っていく過程は、「音楽で会話している」ような感覚。うまく揃った瞬間には、目を合わせてニッコリと微笑み合うこともあります。

また、本番直前の緊張感を共にし、演奏後に湧き上がる達成感を分かち合えるのも、オーケストラならでは。仲間と一緒に音楽を創り上げる経験は、技術的な向上だけでなく、人間的な成長にもつながっていると感じます。

3. 指揮者というリーダーとの出会い

オーケストラでは、指揮者の存在が非常に大きな意味を持ちます。指揮者は、単に拍を示す人ではなく、曲の方向性を示し、各奏者の音を束ねる存在です。

初めて指揮者と合わせたとき、「こんなに音楽の解釈が変わるのか」と驚いたことを今でも覚えています。同じ曲でも、指揮者が違えばテンポも、ダイナミクスも、まるで別物のようになります。楽譜の裏にある物語や感情を、指揮者の言葉や身振りから読み取り、それに応えていく作業は、演奏者としての表現力を豊かにしてくれます。

ときには厳しい要求に戸惑うこともありますが、それを乗り越えて得た演奏には、格別の深みがあります。音楽が単なる音の羅列ではなく、「語りかけるもの」になる瞬間です。

4. 楽譜の向こうにある物語を知る

オーケストラで演奏する楽曲は、数分で終わるソロ曲と違い、交響曲や組曲といった大規模な作品が多くなります。それだけに、楽譜を読み解き、音の構造や物語を理解する力が求められます。

ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」では、冒頭の「ダダダダーン」という印象的なフレーズが、形を変えながら曲全体に繰り返し現れます。各楽章でどのようにモチーフが展開していくのかを知ることで、演奏に説得力が生まれ、聴く人の心を揺さぶる演奏ができるようになります。

また、オーケストラに参加することで、自分が担当するパート以外の楽器の役割や構造にも興味を持つようになります。トランペットがなぜここで強く入るのか、ファゴットがなぜこのメロディを持っているのか……そうした疑問を持ちながら演奏することで、音楽への理解はどんどん深まっていきます。

5. 「音楽が好き」でつながる場所

オーケストラには、学生から社会人、リタイア後に始めた方まで、さまざまな人が集まります。でも共通しているのは、「音楽が好き」という気持ち。だからこそ、年齢も職業も超えてつながれる、特別な場なのです。

日常生活では出会わなかったであろう人たちと、音楽を通じて語り合い、笑い合い、支え合う。オーケストラは、そうした人間関係の広がりをもたらしてくれる場所でもあります。

また、アマチュア団体の多くは定期演奏会などを開催しており、その舞台に立つ経験もまたかけがえのないものです。大勢の観客の前で演奏し、拍手を浴びる瞬間には、自分自身が音楽を通して誰かの心に触れられたという実感があります。

おわりに

オーケストラに参加するということは、単に「大勢で弾く」ということではありません。それは、音楽の新しい扉を開くことであり、自分自身を深く知る旅でもあります。

もしあなたが、楽器を習っていて、何か新しい挑戦をしてみたいと思っているなら——ぜひ、オーケストラの世界に一歩踏み出してみてください。

最初は音を合わせるのも大変かもしれません。でも、その先にある「音がひとつになる瞬間」の喜びは、何ものにも代えがたい宝物です。

オーケストラトレーナーとしてのお手伝いも承っています

私自身、これまでに多くのアマチュア・オーケストラや学生合奏団で、指導・サポートを行ってきました。現在は音楽教室を運営しながら、個人レッスンに加え、弦楽セクションのトレーナーとしての活動も行っています。

  • 「パートごとのアンサンブル力を高めたい」
  • 「弦楽器初心者が多く、基礎を指導してほしい」
  • 「本番に向けて、まとまりある響きをつくりたい」

そんなご要望がありましたら、ぜひお気軽にご相談ください。団体のレベルや目標に応じて、基礎練習から実践的な合奏サポートまで、柔軟に対応いたします。

指導内容の一例

  • 弦楽器(ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ)各パートの基礎・ボウイングの統一
  • セクション練習(分奏)の運営とアドバイス
  • 合奏全体の音のバランス調整・表現力アップ
  • 初心者向けの構え・姿勢・音程指導

オーケストラに参加する一人ひとりが、自信を持って音を出し、仲間と心を通わせる演奏ができるよう、丁寧にサポートいたします。

ご依頼・お問い合わせはこちらから

https://forms.gle/dpqPkJBKxo9ofgYE6

アマチュア団体、学校の部活動、ジュニアオーケストラなど、規模を問わず対応可能です。お気軽にご相談ください。

著者
吉川 采花
東京藝術大学音楽部器楽科卒業。ウィーン市立音楽芸術大学修士課程修了。Hamamelis Quartett 第二ヴァイオリン奏者。
2021年、音楽レッスンサービス Academy Customizeを立ち上げる。現在は東京を拠点に演奏活動をしながら、全国各地で後進の指導にあたっている。

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