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プロも実践する!室内楽リハーサルの基本ルール
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プロも実践する!室内楽リハーサルの基本ルール

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室内楽・オーケストラ

弦楽器の室内楽は、個々の高度な演奏技術に加え、対話的なアンサンブル能力が不可欠なジャンルです。リハーサルでは単なる音合わせに留まらず、音楽的な解釈、フレージング、響きの構築まで、細やかな調整を重ねていく必要があります。

ここでは、室内楽リハーサルをより実りあるものにするために意識したい6つのポイントを挙げます。

1. リスニングの質を高める

室内楽において「聴く」という行為は受動的なものではなく、能動的な音のキャッチと反応が必要です。特に意識すべきは以下の3点です。

  • 主旋律、対旋律、内声、それぞれの役割を聴き分ける
  • 和声進行に応じて響きのバランスをリアルタイムで調整する
  • 他パートのアーティキュレーションや音色に合わせて瞬時に自分の奏法を変化させる

自分が演奏していない間も、常に音楽の中に「参加」している意識を持つことが重要です。

2. リハーサル前のスコアリーディング

リハーサル前にパート譜だけでなくスコアに目を通しておきましょう。

各パートの動き、和声進行、曲の構造を把握しておくことで、単なる自分のパート演奏から脱し、アンサンブル全体を俯瞰する感覚を養えます。

また、重要なモティーフの受け渡し、ハーモニーの変化点などをあらかじめ意識しておくことで、リハーサル中のディスカッションも格段に深まります。

3. 発音のタイミングとアタックを合わせる

弦楽器の室内楽では、音の立ち上がりの統一が極めて重要です。ボウイングの開始位置、スピード、圧力を合わせることで、フレーズのまとまりが生まれます。

  • ボウイングを共有する
  • 目線を合わせたり、呼吸を合わせて同時に「入り」を作る

この「瞬間の一致」が生まれると、アンサンブルはぐっと引き締まります。

4. 音程

弦楽器同士のアンサンブルでは、ピタゴラス音律純正律に基づいて音程をとる必要があります。

  • 根音と第5音の5度をまずは合わせる
  • 5度があったら、5度の響きにあう音程で第3音を弾く
  • 長三和音の場合は第3音は少し低め、短三和音の場合は第3音は少し高めにとります

単にチューナーに合った音を出すのではなく、場面ごとに適切な音程を作り上げ、響きの純度を高めることが求められます。

5. フレージングとアーティキュレーションの統一

同じフレーズを弾く際、ボウイングヴィブラートダイナミクスの設計を揃えることも不可欠です。

  • フレーズの起承転結を共有する(どこに向かい、どこで収めるか)
  • デタッシェ、レガート、スピッカート等、アーティキュレーションを一致させる

特に、音楽的な「語尾」(終わり方)を揃えると、全体の完成度が一段と上がります。

6. 柔軟なリハーサル進行と試行錯誤を恐れない

リハーサルでは一つのやり方に固執せず、いくつかのアプローチを試してみることが大切です。

  • テンポ設定を数パターン試す
  • ボウイングを変えてみる

始めから「合わせよう」とするのではなく、一緒に試行錯誤を重ねることで自然と「寄ってくる」のです。

まとめ

弦楽器の室内楽リハーサルは、技術、耳、感性、そしてコミュニケーション能力すべてを総動員する濃密な時間です。

単なる「合わせ」ではなく、作品への深い理解と、お互いの表現への尊重をベースに進めることで、自分一人では得られない体験ができるでしょう。

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著者
吉川 采花
東京藝術大学音楽部器楽科卒業。ウィーン市立音楽芸術大学修士課程修了。Hamamelis Quartett 第二ヴァイオリン奏者。
2021年、音楽レッスンサービス Academy Customizeを立ち上げる。現在は東京を拠点に演奏活動をしながら、全国各地で後進の指導にあたっている。