ヴァイオリンを弾いていると言うと、「親御さんも音楽家ですか?」と聞かれることがよくあります。でも、私の両親は音楽家ではありません。私が「音楽の道に進みたい」と言った時も反対され、仕事帰りの父を毎晩説得し、数ヶ月かけてようやく許してもらえました。
では何故ヴァイオリンを習い始めたのか、それは通っていた幼稚園でヴァイオリン教室を開いている先生がいらっしゃったからです。体験レッスンでヴァイオリンを見て、「面白そうな楽器!」と私が興味をもった様子をみて、母がお教室に入れてくれました。母には「音楽を習わせたら頭が良くなるのではないか」とか、「礼儀作法が身に付くのではないか」等と言った考えはなかったと思います。
そこで今日は、大人になった自分自身が振り返って「ヴァイオリンを習って良かった」と思うことをご紹介します。みなさんもヴァイオリンを習えばこんなメリットがありますよ、というつもりはありません。あくまで一音楽家の経験として読んで頂ければ幸いです。
集中力が身についた
集中力は、ヴァイオリンを習ったからこそ身についた能力だと確信しています。毎日同じ曲と何時間も向き合い、1つのテクニックを何度も何度も練習し、1人の作曲家の伝記を読み、その作曲家が書いた曲を聴く…
10分程度の本番の為に膨大な時間を費やした経験は、私に集中力を授けてくれました。子供の時に習っていた先生方の音楽との向き合い方を間近で見て、先生方に音楽の面白さを教えていただいたからこそ身についた能力だと思います。
尊敬する人に出会えた
私は幼稚園から中学生の間にに本当に尊敬できる先生方に出会うことが出来ました。音楽を習っていなかったら、一生出会うことはなかったでしょう。音楽家としてはもちろん、人としても尊敬できる先生方で、大人になった今でもその想いは変わりません。
「あんな素敵な音楽家になりたい」「あんな素敵な大人になりたい」そんな憧憬の念が私を音楽の道に誘い、気付けば東京藝術大学の門をたたき、ウィーンへ留学し、ウィーンのオーケストラで弾く機会を頂いていました。
あの出会いがなかったら出来なかった経験が数多くあります。
特徴ができた
学生の時は集団生活を送る中で「普通であること」を求められた記憶があります。でも大人になると「人としての面白さ」を求められる場面が増えました。そんな時音楽家というのは大きな特徴として捉えてもらえることが多いです。「自分にとっては当たり前のことでも一般的には当たり前ではないこと」は、社会人として生きていく上では強みになると感じています。
人生の軸ができた
以前小学生の受講生のお母様が、「この子は一人っ子だから、音楽というお友達を作ってあげたくて習わせました」とおっしゃっていて、なんて素敵な考えだろうと心を打たれました。
よく「ヴァイオリンをやめたいと思ったことはないんですか?」と聞かれます。その問いに私は「何度もありますよ」と答えます。実際楽器ケースを開ける気にならず、数週間弾かなかった時期もありました。でも日々の生活から音楽を完全に排除することは出来ませんでした。街中で音楽を耳にしたり、ふと頭の中に好きな曲のメロディーが浮かんだり。そんな瞬間がいくつも重なって「またヴァイオリンを弾きたいな」という気持ちになるのです。
私はとても周りに影響を受けやすいという自覚があります。でも寄り道しても必ず最後には音楽に帰って来る。音楽は私の人生の軸になっています。
最後に
今回はかなり個人的なことを書いてしまいましたが、これから音楽を始めようとされている方、また既に習っていて続けようか迷っている方の参考になることがあれば嬉しく思います。
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