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伊藤衣里さん インタビュー 中編
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伊藤衣里さん インタビュー 中編

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地方から都内音大に進学した音楽家たち
目次
地方から都内音大に進学した音楽家たち_伊藤衣里さん - この記事は連載の一部です
パート 2: この記事

静岡県浜松市出身 ヴァイオリニスト 伊藤衣里さん

東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校、東京藝術大学音楽学部を卒業。現在は地方、都内のオーケストラの客演や、介護施設、小学校でのアウトリーチなどの活動をしている。

第12回、14回日本クラシック音楽コンクール 小学校の部 全国大会入選。第26回 静岡県学生音楽コンクール 弦楽器部門 小学校の部 第2位。第20回 全日本ジュニアクラシック音楽コンクール本選 弦楽器部門 高校生の部 優秀賞、全国大会 第2位(1位なし)。及川音楽事務所第40回新人オーディション 最優秀新人賞 (第2位)。

これまでに金原珠子、大谷康子、漆原朝子の各氏に師事。

Academy Customizeでは門前仲町教室での対面レッスン・出張レッスン・オンラインレッスンをしています。 ヴァイオリンラボ (オンラインサロン)では、テクニックを強化するグループレッスンも担当してくださっています。

前編: 音楽との出会いを先にお読みください。

#2 藝高での生活

朝子先生はどんなレッスンでしたか?

大谷先生は感情が言葉に出やすい先生です。良い時は褒めてくださるし、ダメなときは厳しくおっしゃるのでわかりやすいんです。

でも朝子先生はトーンがフラットなんですよね。おしとやかな感じで割と淡々とおっしゃる感じなので、「ちゃんと聞かなきゃ!」と身が引き締まったのを覚えています。

一番最初に言われたのは右手でした。特にアップの時に外側の筋肉を使う癖があったので、ずっとその弾き方をしていると長続きしないよ、と指摘されました。内側の筋肉を使いなさいと…

子どもの頃といえど、癖を直すのは大変だったんじゃないですか?

簡単ではなかったですね。

まずは音階で腕をガン見しながら練習しました。曲はどうしてもそればかり意識すると音楽がなくなってしまうので…

でも指摘された次のレッスンで、先生の予想以上に直っていたようで、どんどん次のステップを教えてくださりました。「この音色を出すには力を入れるのではなく、見えない台があると思って腕をあずけて、その位置がちょっと上がる感覚で弾くと良いですよ」といったように…

朝子先生に習うまで基本的なところは意外と触れられてこなかったので、初めて細かく体の使い方や姿勢、力の入れ方を教えていただいたのはとても新鮮でしたね。先生に言われたことを実験の感覚で試すと、音がすぐに変わるから面白かったです。

ちなみに藝高(東京藝術大学音楽学部附属音楽高等学校)の入試はヴァイオリンだけでなく、ピアノや音楽教科の試験がありますが、それはどのように準備しましたか?

ピアノはヴァイオリンより前から習っていたので、特に問題はなかったですね。4歳から引き続き週1くらいで近所の先生にお世話になっていました。

音楽教科も週1でその先生に習っていました。中1ぐらいから楽典や聴音を教えていただいていましたね。

最初はピアノのレッスンと曜日を分けていたような記憶があります。中2か中3くらいの時に同じ曜日に統一して、ピアノのレッスンの後にお茶やお菓子を出していただいて、ひと息ついて聴音や楽典、みたいな感じでしたね。その先生の娘さんも同級生で、エレクトーンや歌、作曲などをやっていたので一緒にお茶や課題に付き合ってもらっていました(笑)

受験勉強のはずがちょっとした息抜きの時間になっていて、とても楽しかったです。

その先生のことは人として好きで、先生に会いに行っている感覚が強かったです。

人として好きな先生に習えるのは素敵なことですよね。 学科はどうやって対策しましたか?

数学が苦手だったので、可能な限りの過去問を印刷して数学の先生に持って行き、解説していただいていました。

解答用紙に細かく解説を書いてくださって、本当にありがたかったです。

見事伊藤さんは藝高の入試に合格されましたよね。実際藝高に入ってみていかがでしたか?

楽しかったですね。今まで地元でヴァイオリンをやっている子はクラスにいなかったし、クラシックの話をしたこともなかったんです。

よくしてくれる、応援してくれる友達にも恵まれてそれはそれで楽しかったんですけど、やっぱりどこか孤独を感じるような瞬間はあった気がします。藝高には同じように昔から音楽を続けてきた子達が全国から集まっているので、狭い教室に全国から来ていると思うと不思議な感じでしたね。

話が通じる感覚はわかります。逆に驚いたことはありましたか?

良くも悪くもみんな素直だなと思いましたね。

中学までの友達は空気を読んだり、なるべくオブラートに包んで言ったりしていた気がします。

でも藝高では、思ったことを素直に口にする子が多いなという印象でしたね。

なるほど…音楽家の特徴なんでしょうか…

やはり表現者は純粋でないとできないのかもしれないですね。ピュアさや尖った部分が必要だと思います。大人しい子もいましたが、皆意見はきちんと主張できるなと思った記憶があります。

女の子は割とサバサバした男っぽい子が多かったですね。外部の方からは「強そう」と言われることも多かったです。

藝高はアンサンブルやオーケストラの授業もありますよね?

そうですね。普通高校に通っていた子たちと比べるとアンサンブルの機会は多かったと思います。

自分たちでカルテットやトリオを組むこともできましたし、2年生からは本格的に室内楽の授業がありました。2年生の冬には他学年の前で弾かなければいけなくて、とても緊張しましたね(笑)

私も藝大(東京藝術大学)の1年生の時の室内楽の授業はとても緊張したので、わかる気がします。 同年代の人たちに聴かれるって、コンサートよりも緊張しますよね。

すごく分かります(笑)

藝高の3年生は奏楽堂公開実技の試験がありますよね。

公開処刑ですね(笑)準備期間も含めて、高校3年間で1番しんどかったかもしれません。

でも先生方から「すごく成長したね」と言っていただけた時でもありました。

#3へ続く

著者
吉川 采花
東京藝術大学音楽部器楽科卒業。ウィーン市立音楽芸術大学修士課程修了。Hamamelis Quartett 第二ヴァイオリン奏者。
2021年、音楽レッスンサービス Academy Customizeを立ち上げる。現在は東京を拠点に演奏活動をしながら、全国各地で後進の指導にあたっている。
地方から都内音大に進学した音楽家たち_伊藤衣里さん - この記事は連載の一部です
パート 2: この記事

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