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テーマを絞ると上達が変わる!短時間レッスンでヴィブラートを極める
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テーマを絞ると上達が変わる!短時間レッスンでヴィブラートを極める

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レッスン日記

今日はヴィブラートを強化する!とテーマを決めて、30分のレッスンを受けてくださった生徒さんがいらっしゃいました。普段は60分のレッスンで曲の練習を中心に進めていることが多い生徒さんですが、今回の30分レッスンではあえて「ヴィブラート」という特定の技術に絞ることで、短時間でも集中して練習に取り組むことができました。

レッスン開始前、生徒さんは少し緊張した表情を浮かべながらも、「テーマが決まっていると、こんなにも充実度が違うんですね」と笑顔でおっしゃってくださいました。この一言には、単に練習時間の長さだけではなく、テーマを明確にすることで生まれる集中力や達成感の違いが現れていたのだと思います。短時間でも、何を強化したいかがはっきりしていると、無駄なく手を動かせるだけでなく、音の変化や自分の成長もより実感しやすくなるのです。

まず最初に行ったのは、左手の指の位置や圧力を確認しながら、弦にしっかりと乗せる感覚を掴む練習です。ヴィブラートは単純に指を揺らすだけではなく、指の接地面や手首の柔軟さ、肘や肩の微妙な角度の調整など、多くの要素が絡んでいます。そのため、まずは基礎となる左手の安定感を作ることが重要です。生徒さんは最初こそ少しぎこちなさがありましたが、私が一つずつポイントを説明しながら手の動きを確認していくうちに、少しずつ指先の感覚をつかみ、弦の上で滑らかに揺れる動きを感じられるようになりました。

次に、ヴィブラートの幅やスピードを意識した練習に進みました。曲中で使うヴィブラートと、単音練習でのヴィブラートは求められる感覚が少し異なります。そこで、まずは開放弦や簡単な音階で指の動きを確認し、その後にエチュードや短いフレーズに応用していきました。生徒さんは最初は少し手が硬くなっていましたが、練習を繰り返すうちに手首や肘の柔軟性が増し、音に表情を付けやすくなってきました。「あ、今の音、少し響きが増えた気がします!」と生徒さんが気付いた瞬間、私も一緒に喜びを感じました。このように、技術の習得は単なる動作の改善だけでなく、音そのものに変化が表れる瞬間にこそ、学ぶ喜びがあるのです。

今回の30分レッスンではヴィブラートに絞って練習しましたが、普段の60分レッスンでは曲の練習に時間を多く割いています。生徒さんによっては、60分レッスンで曲を中心に演奏しつつ、30分レッスンで音階やエチュード、あるいはバッハの練習を集中的に行うこともあります。このように、レッスンの時間や内容を柔軟に分けることで、短い時間でも効率よく技術を向上させることが可能になります。特に集中力が持続しやすい時間帯に短めのレッスンを設定すると、技術の細かい部分まで意識でき、成果も明確に見えやすいのです。

また、レッスンを分けることのもう一つの利点は、生徒さん自身が「今日はここを強化する」という意識を持って練習に臨める点です。テーマが明確であれば、準備の段階から集中力が高まり、指の動きや音の響き、弓の角度など細かいポイントに注意を向けやすくなります。講師側も、生徒さんの課題や改善点に的を絞って指導できるため、短時間でも十分に成果を感じられるレッスンを提供できるのです。この相互作用によって、レッスンの密度と充実度は格段に向上します。

実際に今回のヴィブラート強化レッスンでは、最初の数分で指の動きや手首の柔軟性に焦点を当て、その後、弓との連携を意識しながら音の揺れを確認していきました。生徒さんは、最初は少し手が硬くなりがちでしたが、練習を重ねるごとに指先の感覚をつかみ、音に表情をつける余裕が生まれてきました。「前よりも音が伸びやかに響くようになった気がします」と笑顔で話してくださった瞬間、私も達成感を共有できたのが印象的でした。

さらに、レッスンの最後には、自宅でできる具体的な練習法も提案しました。例えば、開放弦でのゆっくりしたヴィブラート練習では、メトロノームに合わせて指の揺れのスピードを一定に保つことを意識します。はじめは1拍に1回程度のゆっくりした動きから始め、徐々にスピードを上げていくと、手首や指先のコントロール力が養われます。また、指の感覚を確認するために、録音して自分の音を聴く方法もおすすめです。自分で聴くことで、どの音にヴィブラートがしっかりかかっているか、どの部分で手が硬くなっているかを客観的に判断できます。さらに、自宅ではソファや椅子に座って、肩や腕をリラックスさせた状態で練習することも効果的です。緊張が残ったままでは、いくら指を動かしても滑らかなヴィブラートはかかりません。

このように、レッスンの時間を分けてテーマごとに練習することは、講師・生徒双方にとって非常に有効です。曲中心の長時間レッスンと、技術強化に特化した短時間レッスンを組み合わせることで、効率的に演奏技術を向上させることができます。特にヴィブラートやボウイング、移弦など、特定のテクニックを伸ばしたい場合は、短時間でも集中して練習することが大きな効果を生むのです。

最後に、生徒さんから「テーマが決まっているレッスンは本当に充実感があります」とのお言葉をいただき、改めてレッスン計画の重要性を感じました。どんなに短い時間でも、目的が明確であれば、技術の習得スピードは確実に速くなります。今回のヴィブラート強化レッスンのように、短時間でも集中して取り組むことで、自宅での練習にも意欲的に取り組む姿勢が生まれ、演奏の幅も広がるでしょう。

ぜひ皆さんも、レッスンを受ける際は「今日はここを強化したい」というテーマを決めてみてください。曲練習の中で技術を伸ばすことも大切ですが、短時間のテーマレッスンを取り入れることで、演奏技術の習得がより効率的に、より楽しくなります。講師と一緒に目的を明確にしたレッスンを行うことで、演奏への自信も自然と高まります。短時間レッスン+自宅練習+録音チェックを組み合わせることで、毎日の練習がより意味のあるものとなり、技術の習得スピードも飛躍的に向上するのです。

著者
吉川 采花
東京藝術大学音楽部器楽科卒業。ウィーン市立音楽芸術大学修士課程修了。Hamamelis Quartett 第二ヴァイオリン奏者。
2021年、音楽レッスンサービス Academy Customizeを立ち上げる。現在は東京を拠点に演奏活動をしながら、全国各地で後進の指導にあたっている。

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