お正月といえば、家族や親戚が久しぶりに集まる貴重な時間。おせち料理を囲んで話に花を咲かせたり、こたつでぬくぬくしながらテレビを見たり、昔ながらのトランプやオセロで盛り上がったり——世代を超えて遊べる機会が増える、まさに「日本らしい」団らんの時間です。
そんな中、音楽が好きな方なら、もう一歩進んだ楽しみ方を取り入れてみましょう。今日は、音楽を通じて家族や友人ともっと仲良くなれる「音楽の遊び」を2つご紹介します。
遊び1: 同じ調の曲を見つけるゲーム
まずご紹介するのは、音楽理論に少し触れながら楽しめる、「同じ調の曲を見つけるゲーム」です。
【ルール】
- まず、特定の「調」(キー)を決めます。たとえば「ハ長調(C Major)」や「ト長調(G Major)」など。
- その調で書かれたクラシック曲やポップスなどを、交互に言っていきます。
- 先に曲が思い浮かばなくなった人が負け、というシンプルなルールです。
このゲーム、実は非常に奥が深いのです。
たとえば「ハ長調」は、一般的に明るく開放的な響きが特徴ですが、作曲家によってその表現は千差万別です。ラヴェルの《ボレロ》はハ長調の行進曲風のリズムが特徴的で、どこか幻想的な雰囲気もあります。一方で、モーツァルトの《交響曲第41番「ジュピター」》もハ長調ですが、壮大で荘厳な響きを持っています。同じ調でも、こんなにも印象が変わるのかと、改めて驚かされます。
この遊びを通して、調性の持つキャラクターや、作曲家ごとの音楽語法の違いに自然と意識が向くようになります。音楽理論に不慣れな方でも、何度かやっていくうちに「あ、この調はこんな感じの響きがする」という感覚が身についてくるでしょう。
また、クラシックだけでなく、映画音楽やゲーム音楽、J-POPなどにも範囲を広げれば、さらに幅広い世代で楽しめます。特に子どもたちにとっては、「この曲って何調なの?」と興味を持つきっかけにもなります。
【応用編:調の雰囲気を当てるゲーム】
さらに発展させて、「調を当てる」ゲームにするのもおすすめです。曲を流して、聴くだけで何調か当てるというクイズ形式にすると、耳を鍛えるトレーニングにもなります。絶対音感を持っていなくても、日々のリスニングで自然と音感や調性感が養われていくでしょう。
遊び2: 演奏者クイズ
2つ目の遊びは、ややマニアックですが、音楽好き同士ならかなり盛り上がる「演奏者クイズ」です。
【ルール】
- CDやYouTubeなどから、クラシック音楽やジャズ、または好きなジャンルの曲の冒頭を再生します。
- 誰が演奏しているのか(演奏者・指揮者・アーティスト名など)を当てます。
- 正解すれば1ポイント。最後にポイントが多かった人が勝ちです。
この遊びの魅力は、演奏の違いを「耳で聴き分ける」ことにあります。
たとえば、同じバッハの無伴奏ヴァイオリン・パルティータであっても、ハイフェッツの演奏は切れ味が鋭く、スピード感があります。一方で、ヒラリー・ハーンの演奏は端正で透明感があり、まったく異なる印象を受けるでしょう。
「このヴィブラートはクレーメルっぽい」「このテンポ設定はムターかな?」など、微細なニュアンスに耳を澄ますことで、普段は気づかなかった表現の豊かさや奏者の個性を実感できます。
また、クラシックに限らず、ジャズの即興やロックギターのフレーズなどでも「このリフはジミ・ヘンドリックスだ!」といった具合に楽しむことができます。特に家族の中に演奏家や音楽好きがいる場合、この遊びは大変盛り上がります。
【注意点:初心者にも優しく】
ただし、あまりにもマニアックに走りすぎると初心者が入りにくくなることもあるので、「演奏者のヒントを出す」「選択肢を出して選んでもらう」など、ハードルを調整するのも大切です。音源を通じて「聴く力」を育てるという点では、子どもにとっても非常に良い訓練になります。
音楽は「遊び」の中に生きている
今回ご紹介した2つの音楽遊びは、単なるゲームで終わるものではありません。音楽に対する理解を深めたり、耳を鍛えたり、家族や友人との会話を弾ませたりと、さまざまな効果が期待できます。
何より、「音楽は楽しいものだ」という原点に立ち返らせてくれます。日々の練習や理論の勉強ももちろん大切ですが、遊びの中にある自由さや、音そのものを純粋に楽しむ姿勢こそが、音楽を学ぶ上で最も大切なのではないでしょうか。
おわりに
お正月という特別な時間に、少しだけいつもと違う「音楽の楽しみ方」を取り入れてみませんか?
音楽好きな家族や友人と一緒に、笑いながら、考えながら、耳を傾けながら。
きっと新しい発見と、あたたかな記憶が生まれることでしょう。
ぜひ、お正月や長期休暇のひとときに、気軽に試してみてください。